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世界初!手触りによる水認知メカニズムを解明-応用は、化粧品からバーチャルリアリティまで-

2011/11/14

 本学 野々村美宗准教授(大学院理工学研究科准教授)と慶應義塾大学 前野隆司教授(大学院システムデザイン・マネジメント研究科教授)の研究グループは、水に触れた時に脳神経系に加わる特徴的な刺激が水認知のキーであるという、ヒトが手触りによって水を認知するメカニズムを世界で初めて明らかにしました。
 本研究により、ヒトが五感によって水を認知するメカニズムの一端が明らかになっただけでなく、液体の手触りをバーチャルなシステムで再現することが可能であることが示されました。
 この成果は、塗り心地・洗い心地の良い化粧水や食器用洗剤の商品設計に役立つことが予想されます。また、液体を使わずに水に触れたかのような感触を与えるバーチャルリアリティシステムが開発できれば、遠隔手術ロボットや触刺激を組み込んだ3Dムービーなど、様々な分野への応用が期待されます。
 この研究内容については、英国王立協会発行の物理・生物学の境界領域研究の学術誌Journal of Royal Society Interfaceに11月9日(水)付けでウェブリリースされました。

 水は人体の主成分であるばかりでなく、その手触りは極めて魅力的です。本研究によって、この水の手触りの特徴は「キュキュッと感」であり、これは摩擦抵抗の周期変動に起因することが明らかになりました。
 ヒトが指で水をガラス板に塗布する過程では、皮膚上に重力加速度の約7倍の加速度をともなった摩擦刺激が加わります。この加速度は、ロケット発射時に人体に加わる加速度と同等であり、水で濡れたガラス板を触る、という何気ない行動をとる時に、指先には極めて特徴的な力学的刺激が加わっていることを意味しています。
 コンピュータシミュレーションの結果から、この刺激はマイスナー小体、パチニ小体と呼ばれる触覚受容器を発火させること、さらにこの脳神経系への刺激に基づいてヒトは水を認知していることが示されました。
さらに、超音波振動子を用いた力覚呈示装置により、ガラス板上に水を塗布した時に指に加わる力学的刺激を再現することに成功しました。

野々村美宗准教授
(大学院理工学研究科バイオ化学工学分野)

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